ニンジャスレイヤー二次創作本の感想とか(3)

前回までの続きです。

『Light to Shine out of Darkness』(ふがふがビレッジ)
sktmさん、ほか合同本 / ニンジャ万博

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忍殺全編を通しても最もドラマチックな物語のひとつ、「レイズ・ザ・フラッグ・オブ・ヘイトレッド」のニスイと2人の父親をテーマにした合同本。驚くことにTwitter連載からわずか3ヶ月足らずで刊行された本作は、多くのヘッズがこのエピソードから受けたショックを、そのままの熱量で再現しています。確かに、あのシチュエーションには語られていない余白が、特に登場人物たちの過去に関して多分にあって、創作意欲をくすぐる感じはすごく分かります。

内容は小説とマンガが半々くらい。sktmさんは界隈では突出して上手い作家さんだと思うのですが、本作ではデフォルメされたキャラのほうの作風(ナラクおじいちゃん!)ではなく、あくまでシリアスなショートストーリー。他の作家さんの作品にも共通するのは、ニスイを育てるのに、2人の父親がとても苦労をしながら、しかし愛情を持って接してきたのだなあという点。父子で様々な問題を乗り越えてこその、あの本編のクライマックスなんですよね、きっと。
また、珪素さんによる付録の小論が、作中に出てくる小悪党「NSTV第三制作部長」に着目するという極めてマニアックなもので最高です。読んでいてすごく感心してしまいました。

『じょしばな』(イカジャーキープレス社
しまださん / 2014年冬コミ

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これは美麗なイラストとともに、装丁がとてもきれいな本!ニンジャスレイヤーの様々な女子キャラを扱った、イラストとマンガ集です。ヤモトやナンシー、ユカノといったお馴染みの面々から、「グッド・タイムズ~」のキカ・ヤナエやイビルヤモトのような通好みのキャラクターまで、バラエティに富んでいて楽しめます。

エーリアスとブレイズのイラストが、ページを挟んで対になっていたり、細かいところまですごい…。マンガパートは、コミカルなのも面白いのですが、表紙にもなっているパープルタコの話で、シテンノの心の繋がりの深さと、ディセンション以前の秘められた過去、あるいは4人の心象風景?を匂わせるようなラストのコマが印象的でした。

『サークルS(シマナガシ)パンクス』(OEPPU
沖ノ島げろり庵さん / ニンジャ万博

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もしもサークル・シマナガシ全員がコンビニ店員だったら…という最高の一冊。まずフィルギアの店員姿が似合いすぎてて笑います。原作の余白を穴埋めするような二次創作も好きだけど、ここまで吹っ切れたパロディなんかも同時に成立するのは、どの登場人物もキャラが立っている忍殺ならではだなあと。

主に出てくるのはスーサイド。彼はきっと根は生真面目だし、コンビニバイトなんかは無難にこなすんでしょうね。で、いろんなお客さんが来るんだけど、イグナイトとワイルドハント、センチピード&ガントレットとかが普通に遊びに来るのがシュール!と思ったらシャーテックの面々まで出てくるし。げろり庵さんのかわいいキャラ同士が自由奔放に会話しているの、眺めているだけで楽しい。それにつけてもフィルギアの表情がツボです。

ニンジャスレイヤー二次創作本の感想とか(2)

前書きとかレギュレーションは、前回の記事で!では続きです。

『パンチライン・ライク・ア・ZBR・オーバードーズ』(罪罰画業組合)
北浜勇介さん / ニンジャ万博

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オールキャラ4コマ本。主人公サイドから敵ニンジャサイドまで、全方位に向けたネタのバラエティー感と、それでいて読みやすいテンポの良さが印象的です。しかも登場ニンジャの大半が個性的なオリジナルデザインという。特に好きなのが、「生存」って書いたお揃いのニンジャ装束を来ているサバジョの面々、あとフロッグマンのカエル頭巾!

柔軟な発想のネタが面白いです。フジキドに直で弱点を聞きに行くチバくんとか、レイジとキャラの陰気さを競いに来るトリダとアズールとか。あと、濃いキャラばかりのニチョームで健気に頑張っているヤモトがやっぱかわいいですねー。4コマなので、何と言ってもネタの面白さがあってこそなんですけど、あらゆるキャラを拾っていく濃厚で圧縮された感じとか、絵的な面ではトーンの使い分けがすっごく細かかったりとか、全体的に強いこだわりを感じる楽しい本でした。

『epicurean!』(森林博物館)
ささささん / ニンジャ万博

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カタオキ(シルバーキー)、エーリアス/ブレイズを主人公にした小説とマンガ、どれも飲む、食べるをテーマにした短編集です。実のところ、ささささんのカタオキ好きはTLで拝見していたのですが、この作品にはそういう並々ならぬ本編中の彼の所作への細かい観察が表れていて、すごくリアルというか、どのシーンでも生き生きとしていました。

「カンパイ三景」では、シルバーキーとしての覚醒前の孤独なカタオキ、ニンジャスレイヤーというひと時の相棒を得てからのシルバーキー、そしてニューロンの同居人と出会ってからのエーリアスという複雑な心境の変化が、乾杯というミニマルなモチーフに集約されていて見事でした。また、スシ職人として務めたワザ・スシを辞めるエーリアス、というシチュエーションを扱った「旅立ちの前に」。本編の隙間の、誰も思いつかないけど、こういう”カタオキらしい”シーンを見つけるというのがすごい…。シルバーキー、落ち着いたらやっぱりアキモトさんのところに挨拶に行くのだろうなぁ、と想像すると楽しいですね。

『ふわふわもふもふ』(Answer42)
神楽しんりさん / 2014年冬コミ

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翻訳チーム原案の「ケモビールのケモ動物」ことケモちゃんを題材にした、カワイイなショートギャグ集。このキャラは去年のにんぱく前に公式発表されて、案の定ヘッズをざわつかせた(にんぱく合わせの新刊でもいろんなところでネタにされていた)キャラなのですが、この本は全編に渡ってケモちゃんというのがまた!

スパルタカスが古代ローマカラテの新たな構えとして「ケモちゃんの構え」を極めるために頑張るという、一見ゆるそうですごくトガっているネタが大好きです。しかも、それを推してくるのがフェイタルという…なんでしょうね、このカワイイ組み合わせ。

ニンジャスレイヤー二次創作本の感想とか(1)

私は今まではどちらかというと二次創作には興味がないほうで、どんなに好きな作品でも、それを原作とするファンアート自体は、原作とは無関係なものと思っていたんですね。ところが、忍殺に関しては公式がむしろ二次創作を積極的に推奨しているようなところがあって、それを受けて、私もこの作品に関しては原作小説、公式のコミカライズ・アニメ化のみならず、ヘッズの実況・考察ツイートや感想ブログ、そして二次創作マンガ・小説・音楽等を含めたムーブメント(もっと正確に言えばミーム=情報遺伝子の継承)こそが、ニンジャスレイヤー作品の総体なのではないかという考えに至りました。

まあ、そこまで深く考えるまでもなく、単純に自分と同じ重篤なファンの方々が、ニンジャスレイヤーという底知れないスケールの作品を読んで、そのエッセンスをどう表現するかというのに興味があります。なので、それら二次創作作品についての感想を書き残しておくというのもまた、きっと何かしらの意味はあるよねってことで。あとは加えて、ごく個人的な備忘録という意味合いもあります。

そんなわけで、これから何回かに渡って、私が過去に購入したニンジャスレイヤー二次創作本の簡単な内容紹介と、感想を書いてみようと思います。タイトルの凡例は、『誌名』(サークル)、主な著者 / 購入場所…というような感じ。それに、分かる範囲でサークルさんのサイトへのリンクと、写真で表紙の紹介をします。基本、誌名などは奥付を見て手動で入力していますので、表記ミス等あればご指摘ください。

またこれから紹介するすべての作品に言えることですが、創作活動って本当にエネルギーを要することで、普通は日々いろんなことを犠牲にしないと成り立たないと思うんですよね。なので、それらの結晶たる作品たちに対しては、ボンモーや翻訳チームに対するのと同じくらいの深いリスペクトを持っています、ということが拙い文章を通じて最低限伝わればいいなと。絵が上手いからとか好みだからとかそういうことじゃなくて、込められたカラテに対して平等にソンケイを。
※あと「○○=サン」は敢えてふつうに「さん」と表記します。

いま手元にトータルで20作品くらいあって、全部は大変かもしれないけど、出来る限りはピックアップしてみます。その際の順番はバラバラで、発表された時期や購入した時期が前後することがままあるかと思います。それらに特段の意図はありませんので、あしからず。

『ニンジャ文化祭記念アンソロジー』(イカジャーキープレス社
しまださん主宰合同本 / COMIC ZIN新宿店

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2013年4月に秋葉原で開催された『ニンジャ文化祭』合わせのアンソロジー。実はこのとき私は既にニンジャヘッズだったのですが、イベントには行けなくて、後日委託が始まってからZINに買いに行きました。確かこれが初めて買ったニンジャ二次創作同人誌です。ちなみに、ZIN新宿店さんはすごくて、さほど広い店舗面積でないにもかかわらず、ニンジャ同人誌を集めた一角が常設であるんですよ!

さて本作は、総勢30名以上の作家さんが参加された、小説・イラスト・マンガなんでもありの合同本で、初見でそのあまりの熱量に圧倒されたのを覚えています。しかも結構みんな書籍挿絵のイメージから自由な独自デザインだったり、当時まだ書籍化されていない2部、3部のキャラだったりというのを、がっちり特徴を掴んで表現していて。なんかこう、一見バラバラなんだけど不思議と根っこは繋がっているという、ニンジャの二次創作とはなるほどこういうことかと。ネタの方向性としては、キャラクターの魅力を生かしたシチュエーションものの作品が多いです。原作3部まで追いついたヘッズにはぜひ紹介したい1冊。

『ネオサイタマ駐屯組のなんか(冬)』(OEPPU
沖ノ島げろり庵さん / ニンジャ万博

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げろり庵さんの作風は好きで何作か買わせてもらいました。まずネオサイタマ駐屯組という括りが当時自分のなかになくて、新鮮だった記憶が。つまりは2部のザイバツに属するニンジャのうち、ワイルドハント以下ネオサイタマに駐留しているニンジャたちのお話です。改めて考えると、彼らそれぞれキャラが強烈に立っていてバランスがいいんですね。

原作小説では深く掘り下げられていないニンジャたち(ニンジャスレイヤーが殺してしまったので)のコミュニケーションが生き生きと描かれています。登場するニンジャはほぼオリジナルのデザインにもかかわらず、ひと目でそれとわかるのがすごい。ダークドメインの圧倒的な強さについて噂する駐屯組の面々がなんだかゆるくてカワイイです。それでいて、ダークドメイン登場シーンは一貫してシリアスでカッコイイ。あとイグナイトのやんちゃぶりに対して、不遇なプリンセプスのシーンは笑いました。ローマ帝国…。

『ニンジャごはん』(TWO-PAGE
ゆんぺすさん、ほか合同本 / 2014年冬コミ

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ニンジャとグルメを題材にした合同本。ありえないメンツが手狭な食卓で鍋を囲んでいる表紙絵とタイトルからしてキャッチーで、告知を見た時点でガッチリ掴まれてしまいました。ゆんぺすさんの絵柄はポップで洗練されていてかわいい!冒頭のブラックヘイズとフェイタルの日常生活の話が最高で、ほんとにこんな感じであってほしいなあという。イグナイトとインペイルメントのおつかいもカワイイ。

ほかにも、やかんさんのちょっと応援したくなるOL風ストーカーとか、今井にゅうさんの半泣きで山盛りいくら丼をかっこむエーリアスとか、見どころたくさんの本です。それとつい何度も読み返してしまうのが、うさぎ小天狗さんのユカノのズボラ飯風日記。本編では常に超然としてあまり本心を明かすことのないユカノ(だからいまひとつ人気がないのかな?)なだけに、ものすごくフランクな語り口調に好感が持てます。オチも好き!

にんぱく本の進捗(3) 入稿編

hyou1_w1000ちょっと間が空いてしまいました。が、今日、無事印刷所に入稿完了しまして、なんとか予定通り本を出せることになりそうです。ここ一ヶ月ほど、この本の制作にかかりきりでした。いろいろと粘った甲斐があって、自分としては納得のいく作品になったと思います。

なんか、こんなに真剣にマンガに向き合ったのって、もしかしたら初めてかもしれなくて、学ぶことの多い一ヶ月でした。モチベーションの点で大きく作用したのは、やはりニンジャスレイヤーという作品が現在進行形で、なおかつアニメイシヨンなんかも盛り上がっていて、それぞれに自分なりの忍殺を好きにやっていいのだと作者(ボンド&モーゼズ)が改めて明言してくれたことです。もちろん、原作の公式設定は拾いつつも、その範囲でやれることをやろうと。結果、普段の作品よりも自分らしさが色濃く出ている作品になったような…おもしろいものです。

印刷所はまったくアテがなくて、どうしようかと悩んだのですが、結局「ニンジャ万博」さんのサイトで紹介されていた、イベントアシスト対応(直接搬入可&割引)のリストのなかから、しまや出版さんにお願いすることにしました。メジャーどころだし不安もなさそうなので。何しろ、印刷所にちゃんと依頼して本作るのって、11年ぶりとかなんですよね。いまはいろいろと簡単になっていてびっくりです。データ入稿したら、1時間足らずで電話連絡をいただけて、特に不備もなく。

表紙オンデマンド、本文オフセットの「オンデ表紙セット」で、15%の早割が適用されたので、全体費用は当初予算よりも抑えめに作ることができました。部数はちょっと悩んだのだけど、夏コミ(当落未定)もあるし多少強気の数字を。なので、にんぱくで売り切れるとかはまずなさそうです。

告知は、30日の本番に向けて少しずつ進めていくつもりです。そのなかで、具体的な内容の紹介もできればと。ひとまずは肩の荷がおりました。

ニンジャスレイヤー第2部の感想

先日、小説版『ニンジャスレイヤー』の12巻めが出たことで、「キョート・ヘル・オン・アース」編、いわゆる第2部が無事に完結しました。Twitterでリアルタイム翻訳連載中のものが第3部なので、ようやく書籍版ももう少しで追いつけるところまできたわけですね(と言っても3部がまた長いわけなんだけど)。

それに合わせて、公式アカウントでは、恒例となっている人気エピソード投票が開催中です。これは第2部を対象として、専用ハッシュタグ#njvotekhoeに好きなエピソードと感想を書こうというもので、これまでも折に触れて行われてきた企画ですが、加筆修正完全版たる書籍が出揃ったことで、ジュブナイルめいた長大な連作である第2部を、読者の視点からあらためて俯瞰できるようになりました。やっぱ他の人の感想を読むのがおもしろい。

第2部とは

ニンジャスレイヤーという作品は、基本的には1話完結の読み切り作品になっていて、それぞれのエピソードでフォーカスされる主人公や登場人物、舞台、テーマも毎回違います。書籍に掲載されるお話の時系列もバラバラ。それが連なることによって、大きな奔流とも言えるストーリー、テーマが浮かび上がるという構成になっています。

第2部は、おおよそ40話あまりのエピソードからなり、書籍で言うと計8冊分。第1部の「ネオサイタマ炎上」が4冊なので、単純に倍のボリュームです。その主な舞台は「キョート」。作中のキョートは日本から独立した共和国で、その地下には、逆円錐型に連なる巨大都市、貧富が厳しく階層化されたディストピア「アンダーガイオン(≒祇園)」が形成されているという設定です。
忍殺というとよく話のネタにされる「ネオサイタマ」も出てきますが、あくまで話はここキョートを中心に展開するのが第2部の特徴。ちなみに、ニンジャスレイヤーはネオサイタマからキョートまで新幹線で移動します。

お話的には、シンプルに直線的なダークヒーロー復讐劇であった1部に対して、2部では謎解き、アドベンチャーのようにして、だんだんと敵の正体や目的が見えてくるという作り。その象徴的なサブキャラクターが、タカギ・ガンドーという壮年の私立探偵です。彼はニンジャではない一介の市民で、しかもZBR(ズバリ)という薬物に溺れすべてを失う直前にまで追いやられた、落ち目の探偵なのですが、ニンジャスレイヤーとの出会いによって、また彼自身の過酷な運命と直面することによって、劇的な再起を果たします。これがまず、一番の見どころ。

もちろん、第2部でもニンジャスレイヤーはニンジャを殺しまくります。ニンジャスレイヤーことフジキド・ケンジの妻子の仇は、実は第1部で滅ぼした組織「ソウカイヤ」のニンジャだけではなかった、というのがその理由。マルノウチ・スゴイタカイビルで起こったニンジャによる市民の大量虐殺は、ネオサイタマの「ソウカイヤ」、キョートの「ザイバツ・シャドーギルド」との間で起こった、ニンジャ同士の血で血を洗う抗争の結果だった。その事実をガンドーとともに逆に辿って行くうち、キョートで起こっている陰謀、そしてその首謀者「ロード・オブ・ザイバツ」に立ち向かうことになる。

一方で、こういったシリアスな筋書きのなかにも、ユーモラスで魅力的なキャラクターが多数登場するのが2部の特徴です。代表的なのがシルバーキーというキャラ。彼はキョートで鍼灸師を営む普通の気のいい兄ちゃんだったのですが、ある日ニンジャソウルに憑依されたことで、他者の心の中に潜航する特殊能力を身につける。これがいい感じのお調子者で、彼がこの2部を相当に引っ掻き回してくれます。

ついでに言うと、このシルバーキー関連のエピソードでもそうなんだけど、2部ではネットワーク上の仮想世界がより詳細に描かれていて、忍殺の世界におけるSF的な骨組みをより強固なものにしています。
作中では、ごく一部の優れたハッカーだけが知覚することのできる電子的超越世界「コトダマ空間」と、魂あるいは自我の在り処であるところの心象世界が、同一のものとして描かれる。つまり、ネットワークとは、IPアドレスとは、データとはという表現を掘り下げるたびに、魂とは、自我とは、死とはいう哲学的な問いに直結する構造になっているのです(これは3部でより明らかになります)。とあるエピソードにおいてハッカー、ナンシー・リーが言う「ネットワークとは何?いつからある?」というセリフが象徴的でした。

他にも、好きなキャラでいうと、ネオ・カブキチョで店を構えるオカマのニンジャ、中2病をこじらせて暗黒面に堕ちてしまう少年ニンジャ、立派な修行僧なのにニンジャソウルに憑依され苦悩するニンジャなんかもいます。

私の5票

いま、ニンジャスレイヤーにハマりすぎてTwitterサブアカウント(@epxstudio_nj)も持っているのですが、そちらで今回の第2部エピソード投票企画に投じた5票分のエピソードが、次に挙げるものです。レギュレーションで5票までということになっているので絞ってはみたものの、正直他にもいい話はいっぱいあって、苦渋の選択ではありました。

せっかくなのでここでは、投票時に書いた作品への感想コメントに若干の補足をしつつ、タイトルはTogetter版へリンクを張っておきます。ああそう、大事なこととして、ニンジャスレイヤーという作品は書籍化もされていますが、Twitter上で今もそしておそらく今後も、ほぼ全ての作品を無料で読むことができます。Togetterでもいいし、iOSやAndroidをお使いであれば有志の作ったリーダーアプリが便利です。

初めて読むのであれば、下記の中では「チューブド~」が特におすすめ。

ゲイシャ・カラテ・シンカンセン・アンド・ヘル

忍殺でこのタイトルで面白くないわけがない!ゾンビーニンジャ、ジェノサイドのハードボイルドな活躍を軸に、ニンジャスレイヤー、ザイバツ一味ら多元的に展開する物語構成、爆走する新幹線そのものの目まぐるしく変化する状況、そのなかで翻弄される一般市民の勇気と意地。

チューブド・マグロ・ライフサイクル

ぶっ飛んだ設定がガンガン出てくる一方で、アンダーガイオンの閉塞的でリアルな日常描写は、現代の日本社会の鏡写しのようで。書籍版の結末でのあまりにも繊細な加筆修正には舌を巻いた。ヨロシサン製薬の真実。鹿!テクノ!

リブート、レイヴン

第二部の助演男優賞タカギ・ガンドーのターニングポイントとなる物語。定番SF設定をなぞりつつも、切ないシチュエーションにぐっと来てしまう超名作でした。構成もすごく凝っている。2部の他のエピソードを十分に読んだ後に、ぜひ読んでほしい。

スリー・ダーティー・ニンジャボンド

共闘ヤッター!まさかのニンジャスレイヤー、ジェノサイド、フォレスト・サワタリという3大狂人の夢の共闘編。書籍版のわらいなく先生の見開き挿絵には大興奮しました。終わりかたがまたいいんだ。ぜひいつか映画化を実現してほしいエピソードのひとつ。

ウェイティング・フォー・マイ・ニンジャ

第2部は、張り巡らされた伏線が網目のように交錯して、その交点で展開するこういうファンサービス的なエピソードが醍醐味だと思うのです。すべてのキャラクターが生き生きしていて、ふふってなる。

そのほか、2部のエピソード一覧はWiki(エピソード一覧/第2部 – ニンジャスレイヤー Wiki*)を。

ニンジャサウンド・ギターサンダーボルト

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“小説”のライブ!

コミティア前日の22日夜、とあるライブイベントに行ってきました。このライブに行けるように無理して原稿を頑張ったみたいなところもあって、つまりは大変楽しみにしていたのです。それが、小説『ニンジャスレイヤー』のライブ、題して「ニンジャサウンド・ギターサンダーボルト」。

まず、ふつう”小説”のライブというところからして説明が必要だと思うんだけど、現在出版されている書籍11巻のうち、いくつかの特装版に付属しているオーディオドラマというのがあって、そこで使用されている楽曲のサウンドトラックCDが最近出たのです(最新刊の特装版に同梱)。で、そのサントラCDのTwitter上での同時再生実況イベントなどがあって、にわかに盛り上がってきたところ、急遽10月27日に公式から発表されたのがこのライブイベント。この時点でライブ当日まで1ヶ月を切っており、しかも、ニンジャスレイヤーに関しては公式が主催するファン参加型の単独イベントが史上初ということもあって、いつもながら翻訳チームによる唐突な発表にTL界隈は騒然としました。

今回は、場所が恵比寿のライブハウス「LIVE GATE」というキャパ300くらいの小バコで、案の定チケットも5分足らずで売り切れてしまったのですが、私は運良く(というか秒単位で発売開始時刻を確認しつつ、繋がらないサイトと戦った結果)チケットを取ることができました。
これについては色々と思うところもあって、昨今のニンジャスレイヤー人気を鑑みると、この規模のハコに収まらないのは自明のことだし、ましてやこれまでも有志によるDJ・ライブイベントが自発的に企画されるほどの熱量のなかで、参加できないヘッズたちの無念さたるや。Ustreamによる中継も提供されたとはいえ、やっぱりね。一方、企画側としては当然小規模なものから実績を積み上げていく必要があるのだろうし、突貫でもまず一回やってみようというスピード感は支持できる。悩ましいところです。

開場から開演まで

で、当日。会場のLIVE GATE(奇しくも忍殺では「シックスゲイツ」「ゲイトキーパー」「ヘルゲート」「オヒガン・ゲート」「トリイ・ゲート」「ゲート、ゲート、パラゲート…」などなど連想できる用語がたくさんあるのですが)に会場20分前くらいに着くと、既に何人か。チケットの整理番号順に並ぶよう誘導される。お客さんの男女比は男性のほうがすこし多いくらいで、未成年NGとはいえ、年齢層もおそらく多少の開きがありそう。状況が状況なので、仲間内で集ってというのもそう多くなく、路上に静かに漂う熱気…ニンジャアトモスフィア。
開場が予定より押しているというのをTwitterの翻訳チームのツイートで知り、続々伝えられる怪しげな会場内の情報にザワザワする。既にライブ感が。

しばらくして列が進み、順に中に入るとやはりそこは小バコ。黒い壁に赤の内装で、さっそく雰囲気が出ている。ステージサイドは映像用のスクリーンが下がっていて、対面にバーカン。回ってきたカクテルのメニューを見てまず笑ったのが、44種類のドリンクに全部ニンジャネームがついている!翻訳チームが仕込んだらしく、どれも本編を読んでいたらニヤニヤしてしまう絶妙なセレクト。残念ながらカウンターが混み混みで注文できる感じではなかったので、ひとまずパスして最前を確保する形で開演を待ちました。

客入りは最終的に何人くらいだったのか、身動き取れないほどというわけでもなく、おおよそ満員の感じ。見渡すとオリジナルのマスクなりメンポを装着したヘッズの方もちらほら。なかでもiPhoneアプリ「NJRecalls」かいはつチーム=サンの自作サイバーサングラスが目立っていました(超かっこよかった)。
開演を待つあいだ、フロアの非常灯に赤いセロファンが被さって人型のアイコンが赤黒になっているのを目ざとく見つけたヘッズがいて、「アイエエエ!」「コワイ!」みたいにNRSが連鎖していったのがヤバかった。

さて、何度か普通の声で諸注意のアナウンスがあったあと、オーディオドラマのニンジャスレイヤー(森川智之さん)の録りおろし?のアイサツでスタート。まずはYouTubeで公開されているPV第1弾第2弾が流れて早速の大盛り上がり。冒頭ロゴの「アイエエエ!」に大勢のヘッズのシャウトが重なる研修されっぷり。みんなすごいな!
それから『カタナ・ソード・アンド・オイラン・ソーサリー』の「ほとんど違法行為」の部分までが流れる。これ、EDMっぽく作っているだけあって、スクリーンでライブハウスの音響で聴くとかなり臨場感がある。カワイイヤッター!

第1部 DJ

PVの上映が終わり、スクリーンが上がると、舞台前面には何もなく後方はシートで覆われていて、上手にCDJとミキサー、Macを備えたDJブース。その奥で忍殺メンポを装着し、両手を合わせてアイサツの姿勢を取るDJあり。あれっ、顔が半分隠れていて定かではないけれど、あの佇まいどこかで…しかしいや、まさかと思いつつ、ニンジャスレイヤー楽曲から冒頭の繋ぎですぐに判ってしまいました。Q’Heyさんだ!

実を言うと、私はQ’Heyさんがごく最近njslyrアカウントをフォローしたのに気が付いていて、でも理由というか繋がりがさっぱり分からなかったのですが、こういうことだったのかと。ご存じのないヘッズの方へ説明すると、Q’Heyさんって東京で最古参の「Reboot」というテクノパーティーを16年にわたって主宰している、ザイバツで言えば間違いなくグランドマスター位階のDJニンジャなんですよ。考えてみれば、テクノをはじめとするダンスミュージックやクラブ描写に深い理解のあるニンジャスレイヤーのイベントで、ギターやロックにも造詣が深く、無類の特撮や怪獣好きで知られるQ’HeyさんがオープニングDJ起用されるというのは、これ以上ないキャスティングなわけです。
それにしたって、こんな小バコのカルト的な重篤読者の集まり(!)に、まさか自分にとって90年代からのテクノヒーローが出演すると思わないじゃないですか。しかも、がっつりニンジャスレイヤーの文法を分かってくださって。いやーなんというか、今年一番のサプライズでした。

選曲としては、序盤からRebootばりの重いテクノで畳み掛け、随所に積極的にサントラの楽曲を挟みつつ、中盤以降はブレイクビーツやロックなど4つ打ち以外のトラックも多めに。今回、演者どころかライブの構成も事前に一切明らかにされないなかで、幕が上がってのオープニングがいきなりガチのテクノだったので、お客さんも初めは戸惑っているようでした。ただ、それも進むにつれてだんだんと熱気が温まっていくのが分かった。最後に再び「ナラク・ウィズイン」に戻ってきて、盛況のうちに第1部が終了。フロアに向かってアイサツをして、舞台をハケていくQ’Heyさん。最後までサービスに徹していました。オツカレサマドスエ!

MCとトークゲスト

ここで幕間にMCのラビット・ロンさんが登場。主にPVのプロデュースやCG制作でニンジャスレイヤー・プロジェクトに参加されている方だそうです。まず、セガとナムコの音ゲーに関するコラボ企画がスクリーンで紹介されたあと、シークレットゲストの呼び込みがあって、それがなんと、オーディオドラマでヤモト・コキとシルバーカラスを演じた、声優の雨宮天さんと藤原啓治さんのお2人!ゲストありとは予告されていたものの、予想以上のビッグゲストの登場に沸き立つヘッズたち。みんなあの「スワン・ソング~」の熱演を聞いてるんだもんね、そりゃあそうだ。

トークは15分ほどでしたが、収録に関する裏話などがいろいろ聞けました。特に面白かったのは、藤原さんが収録前にドラマの脚本を読んで、いわゆる「忍殺語」の誤字脱字をひとつひとつ直していたという話。森川さんなども「マルノウチ・スゴイタカイビル」の発音のしかたが分からずにいたら、翻訳チームに「三井住友ビルディング」ばりに読んでください、と言われたとのこと。

途中で、今日のライブにお客さんとして、声優でナッツクラッカー役の拝真之介さんと、エレクトリックイール役の佐々木義人さんも遊びに来ていることが紹介され、騒然となるというできごともありました。なんという奥ゆかしさ。ドラマのエレクトリックイール=サンのサンシタ演技最高なんだよ!
あと終わりのほうで、ヤモッチャンのキャスティングがTRIGGERのアニメでも継続なのかと匂わせるヘッズに対し、頑なに口を割らないラビット・ロンさんが面白かった。そりゃ言えないですよね。

ところで、会場でこの声優さんのトークショーが開催されている時間帯は、諸般の事情でUstreamによる中継は中断していたそうです。あとで知りましたが、その間、同じCM映像が8回も繰り返されていたとのこと!こんなの普通ならブーイングの嵐だと思うんだけど、いつもながらそれに対する翻訳チームのツイートによる舵取りが絶妙なのと、ヘッズの飲み込みの早さに、あとから#njslyrタグを追いかけて心底感心してしまいました。このCM映像、生放送限定とのことで、会場組の自分はいまだに見ることができなくて、うらやましい。詳しい経緯は、例によってTogetterにまとめられています。

【実況】ニンジャサウンド・ギターサンダーボルト #0 第二部 – Togetterまとめ
http://togetter.com/li/748464

第2部 ライブ

いよいよ、メインのライブセクション。再びスクリーンが上がって現れたのは、第1部では覆い隠されていたステージ後方の威圧的な和太鼓ドラムセット。ギター、三味線、尺八、そしてサポートDJとして再度参加のQ’Heyさんらプレイヤーのセッティングが完了し、ラビット・ロンさんのMCで始まった1曲目はもちろん、ニンジャスレイヤーがニンジャを殺すときに流れる曲!

メンバーについては、チケット上でも「OMURA・Entertainment Inc. Music Division」とされ、最後まで公式に紹介がなかったのですが、Twitterからの情報を総合すると下記のようです(敬称略)。このうちで三味線と太鼓奏者の方は、サントラ収録時のメンバーでもあるようですね。

  • ギター: PANTHER
  • 三味線: -KIJI-
  • 尺八: 平野透山
  • 太鼓: 茂戸藤浩司
  • DJ: Q’Hey

また、後述するファミ通.comのライブレポートによれば、セットリストは以下。

  1. プレリュード・ゼン~ニンジャスレイヤー ナラク・ウィズイン
  2. エッジ・オブ・ザ・ストラグル
  3. ドラゴン・インストラクション
  4. ア・ガール・フロム・キョート・リパブリック ReMix ver.
  5. デス・リーパー666km/h
  6. ゴジュッポ・ヒャッポ
  7. トドメオサセ
  8. ラスト・ガール・スタンディング
  9. (アンコール)ニンジャスレイヤー ナラク・ウィズイン

収録時と同じ編成によるライブセットというわけではなく、オケとソロプレイヤーのセッションという感じでした。楽曲自体がニンジャスレイヤーの世界観に合致していてカッコイイのはもちろん、それぞれのプレイヤーに見せ場があって、ステージングも熱かった。

2曲目までハイテンションで盛り上がって、3曲目のドラゴン・センセイの尺八ソロでしんみり、ヤモッチャンのテーマはDJソロによるミックス。デス・リーパーはぜひオリジナルのツーバスでも聴きたかったけれど、ギターのPANTHERさんのパフォーマンスもカッコ良かったし、タイキストの超絶乱打に圧倒されたのでこれはこれで。ゴジュッポ・ヒャッポからのトドメオサセでまたギアが一段上がる感じで、最後のラスト・ガールまであっという間。
いったんメンバーが下手にハケたあと、ヘッズの「オームーラ!オームーラ!」のアンコールで再びのナラク・ウィズイン。全25曲収録のサントラからはキャッチーな曲のみの抜粋という形でしたが、ひと通りは演ってくれて物足りない感じはまったくなかったです。ステージとフロアの近さについても、小バコならではの一体感が感じられて、最後まで楽しかった。なんとも言えない余韻を残しつつ、ライブは21時半前には無事終演。いやーすごかったね。

「#1」に向けて

でその終演直後、翻訳チームから出たアナウンスがこれ。今回は#0だったのか!

ニンジャサウンド・ギターサンダーボルト #0 完。 #1 に是非続きたい。ビガーヴェニュー!フルセット!我々は今回のパワに確信!
— Ninja Slayer (@NJSLYR) 2014, 11月 22

まあおそらく、いろんな意味で突貫だったのは想像に難くなく、PANTHERさんは前日リハまでに急遽ブッキングされたようだし、言ってみれば需要の大きさに対してこれだけの規模でとりあえず実現に漕ぎつけたというのは、企画側にとっても本意ではない…というか「行かれぬから」だったヘッズに対しても、「#1にしたくない」部分はあるのだと思います。

なので、上のツイートでも言及されているけど、大きいハコで、フルセットのバンドでというのはぜひ次は実現してほしいところです。付け加えるなら、重篤ヘッズによるVJなんかがあったらもっと盛り上がると思うんだ。本編の台詞が文字でバーッと流れるとか、やっぱインストのライブだけに、テキストの持つパワとの相乗効果でカラテにカラテをかけて100倍だ。

物理的に一箇所に集ってニンジャスレイヤーコンテンツで盛り上がるというのは、有志によるイベント「ニンジャ万博」でも体験済みの通りで、TL上の実況イベント以上に間違いなく楽しい。機会があれば、公式非公式問わず、こういうイベントが増えるといいなと思います。

思っていた以上に長々と書いてしまいました。簡潔なレポと写真はファミ通.comで。

『ニンジャスレイヤー』のライブイベントが開催、人気アーケードゲームなどとのコラボ企画が続々発表! – ファミ通.com
http://www.famitsu.com/news/201411/22066347.html