ニンジャスレイヤー二次創作本の感想とか(4)

ニンジャのウスイホン勝手にレビュー第4回です。

『シマッテコーゼ!』(ちくわ大明神)
ヌーヌさん主宰合同本 / COMIC ZIN新宿店

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これは2013年の夏コミ合わせの本だったのかな?私は遅ればせながら、わりと最近になってからZINの店頭で購入しました。総勢30名の作家さんが参加された、大ボリュームの小説・マンガアンソロジーです。箔押しの入った美しいオールスターキャストの表紙絵は、巻頭のマンガも描かれている今井にゅうさんによるもの。その他、ヘッズ界隈ではお馴染みのウキヨエ師さんが多数参加されています。

あぶらあげさんのザイバツ・グランドマスターを犬に例えた4コマが、すごくしっくりくる「擬犬化」で上手いなあと思います。また、うさぎのかぶりものさんによるブラックウィドーとフューネラルが出会う話は、オリジナル設定とはいえアマクダリニンジャのディセンションにも色々な背景があることを伺わせる印象的なシチュエーションでした。

あとワザ・スシで執拗にマグロをオーダーするユンコちゃんの話(しまださん)とか、後にシャーテックを生むICBS思想が、実はセンチとガントがノリで話していただけっていうの(uzamさん)とか、2部ラストで心の折れたパーガトリーをニーズヘグが拳を交わして拾い上げる熱い小説(あまねさん)とかもおもしろかったです。

特にすごいなと思ったのは、デスフライさんの小説『スマッシュ・ライク・レイン、ブロウ・アズ・ウィンド』。ディセンションしたばかりのウミノ・フマトニことソニックブームと、その師たるインターラプターの秘話を描いたエピソードで、ラスガ前夜へときれいに繋がるラストが素晴らしいです。ソニックブームが好きになったし、こういう二次創作は本当にそのキャラに思い入れがないと書けないだろうなあと思いました。

『IDOLSL@YER』
ヨシミツさん / 2014年冬コミ

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以前、ニンジャネタで緻密なモテモテ王国パロなども描かれていた吉光さん(Pixiv)の冬コミ本。タイトルからアイマスのクロスオーバーネタかと思いきや、あくまでもシリアスでカラテシーンもカッコいいオリジナルエピソードでした。忍殺二次創作って、こういうふうに本編エピソードを模したオリジナルエピの読み切りマンガって意外と多くないですよね。

ストレートにアメコミ調の描写が、公式のコミカライズでもどこもやっていないので逆に新鮮でした。巻末のジェノサイド&エルドリッチとサバジョのイラストも、モノクロながらものすごく力強くてカッコいいです。

『い・け・な・い ニンジャガールズ』(TWO-PAGE&ヤラカシタ・エンタテイメント)
ゆんぺすさん、下品ラビットさん、沖ノ島げろり庵さん / ニンジャ万博

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あくまで健全な少年誌的スケベギャグをテーマにしたという合同本(全年齢向け)。ただただ気楽に読めて楽しめます。大好きですね!ゆんぺすさんのマンガは、オリジナルニンジャのザップドがハレンチ・ジツでいろんなことをするっていうお話で、なぜか超ノリノリのガンドーとエーリアス、それに対してジト目の女性キャラ陣に笑いました。すごいカワイイ。

下品ラビットさんの妄想力全開の「イグちゃんなう!」は、その熱いイグちゃん推しに痺れます。情熱がすごい…!またげろり庵さんのモスキート×フブキ・ナハタというありそうでなかった組み合わせは、あのモスキートがタジタジという結果になんだか納得してしまいました。リー先生の服だけ溶かす溶解液、最高です。

『犬にも劣る』(OEPPU)
沖ノ島げろり庵さん、ほか合同本 / 2014年冬コミ

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この本はすごくて、全編が「孤独なヤクザ処刑エージェント」本なんですね。これは、ダークドメインがニンジャとなる前の過去についてザ・ヴァーティゴがask.fmで答えたもので、つまりは本編にもまったく描写がないモータル時代のダークドメインについて、このたった一文から7名の参加ヘッズの方々が想像力を巡らせた本なのです。なんという多様性の素晴らしさ。

げろり庵さんの表題作は、普段の作風とは違うシリアス100%の小説とマンガによる短編で、ギリギリに追い込まれた局面でもクールに立ち回る、若き日のダークドメインが描かれています。ヤクザ組織の抗争のなかにニンジャが紛れ込む複雑さを丹念に描写する前半パート、ニンジャ同士のカラテをインパクトのある絵でダイナミックに表現した後半パート、また同様にマンガパートと文章パートの白と黒のようなコントラストに味わいがあります。

ニンジャスレイヤー二次創作本の感想とか(3)

前回までの続きです。

『Light to Shine out of Darkness』(ふがふがビレッジ)
sktmさん、ほか合同本 / ニンジャ万博

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忍殺全編を通しても最もドラマチックな物語のひとつ、「レイズ・ザ・フラッグ・オブ・ヘイトレッド」のニスイと2人の父親をテーマにした合同本。驚くことにTwitter連載からわずか3ヶ月足らずで刊行された本作は、多くのヘッズがこのエピソードから受けたショックを、そのままの熱量で再現しています。確かに、あのシチュエーションには語られていない余白が、特に登場人物たちの過去に関して多分にあって、創作意欲をくすぐる感じはすごく分かります。

内容は小説とマンガが半々くらい。sktmさんは界隈では突出して上手い作家さんだと思うのですが、本作ではデフォルメされたキャラのほうの作風(ナラクおじいちゃん!)ではなく、あくまでシリアスなショートストーリー。他の作家さんの作品にも共通するのは、ニスイを育てるのに、2人の父親がとても苦労をしながら、しかし愛情を持って接してきたのだなあという点。父子で様々な問題を乗り越えてこその、あの本編のクライマックスなんですよね、きっと。
また、珪素さんによる付録の小論が、作中に出てくる小悪党「NSTV第三制作部長」に着目するという極めてマニアックなもので最高です。読んでいてすごく感心してしまいました。

『じょしばな』(イカジャーキープレス社
しまださん / 2014年冬コミ

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これは美麗なイラストとともに、装丁がとてもきれいな本!ニンジャスレイヤーの様々な女子キャラを扱った、イラストとマンガ集です。ヤモトやナンシー、ユカノといったお馴染みの面々から、「グッド・タイムズ~」のキカ・ヤナエやイビルヤモトのような通好みのキャラクターまで、バラエティに富んでいて楽しめます。

エーリアスとブレイズのイラストが、ページを挟んで対になっていたり、細かいところまですごい…。マンガパートは、コミカルなのも面白いのですが、表紙にもなっているパープルタコの話で、シテンノの心の繋がりの深さと、ディセンション以前の秘められた過去、あるいは4人の心象風景?を匂わせるようなラストのコマが印象的でした。

『サークルS(シマナガシ)パンクス』(OEPPU
沖ノ島げろり庵さん / ニンジャ万博

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もしもサークル・シマナガシ全員がコンビニ店員だったら…という最高の一冊。まずフィルギアの店員姿が似合いすぎてて笑います。原作の余白を穴埋めするような二次創作も好きだけど、ここまで吹っ切れたパロディなんかも同時に成立するのは、どの登場人物もキャラが立っている忍殺ならではだなあと。

主に出てくるのはスーサイド。彼はきっと根は生真面目だし、コンビニバイトなんかは無難にこなすんでしょうね。で、いろんなお客さんが来るんだけど、イグナイトとワイルドハント、センチピード&ガントレットとかが普通に遊びに来るのがシュール!と思ったらシャーテックの面々まで出てくるし。げろり庵さんのかわいいキャラ同士が自由奔放に会話しているの、眺めているだけで楽しい。それにつけてもフィルギアの表情がツボです。

ニンジャスレイヤー二次創作本の感想とか(2)

前書きとかレギュレーションは、前回の記事で!では続きです。

『パンチライン・ライク・ア・ZBR・オーバードーズ』(罪罰画業組合)
北浜勇介さん / ニンジャ万博

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オールキャラ4コマ本。主人公サイドから敵ニンジャサイドまで、全方位に向けたネタのバラエティー感と、それでいて読みやすいテンポの良さが印象的です。しかも登場ニンジャの大半が個性的なオリジナルデザインという。特に好きなのが、「生存」って書いたお揃いのニンジャ装束を来ているサバジョの面々、あとフロッグマンのカエル頭巾!

柔軟な発想のネタが面白いです。フジキドに直で弱点を聞きに行くチバくんとか、レイジとキャラの陰気さを競いに来るトリダとアズールとか。あと、濃いキャラばかりのニチョームで健気に頑張っているヤモトがやっぱかわいいですねー。4コマなので、何と言ってもネタの面白さがあってこそなんですけど、あらゆるキャラを拾っていく濃厚で圧縮された感じとか、絵的な面ではトーンの使い分けがすっごく細かかったりとか、全体的に強いこだわりを感じる楽しい本でした。

『epicurean!』(森林博物館)
ささささん / ニンジャ万博

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カタオキ(シルバーキー)、エーリアス/ブレイズを主人公にした小説とマンガ、どれも飲む、食べるをテーマにした短編集です。実のところ、ささささんのカタオキ好きはTLで拝見していたのですが、この作品にはそういう並々ならぬ本編中の彼の所作への細かい観察が表れていて、すごくリアルというか、どのシーンでも生き生きとしていました。

「カンパイ三景」では、シルバーキーとしての覚醒前の孤独なカタオキ、ニンジャスレイヤーというひと時の相棒を得てからのシルバーキー、そしてニューロンの同居人と出会ってからのエーリアスという複雑な心境の変化が、乾杯というミニマルなモチーフに集約されていて見事でした。また、スシ職人として務めたワザ・スシを辞めるエーリアス、というシチュエーションを扱った「旅立ちの前に」。本編の隙間の、誰も思いつかないけど、こういう”カタオキらしい”シーンを見つけるというのがすごい…。シルバーキー、落ち着いたらやっぱりアキモトさんのところに挨拶に行くのだろうなぁ、と想像すると楽しいですね。

『ふわふわもふもふ』(Answer42)
神楽しんりさん / 2014年冬コミ

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翻訳チーム原案の「ケモビールのケモ動物」ことケモちゃんを題材にした、カワイイなショートギャグ集。このキャラは去年のにんぱく前に公式発表されて、案の定ヘッズをざわつかせた(にんぱく合わせの新刊でもいろんなところでネタにされていた)キャラなのですが、この本は全編に渡ってケモちゃんというのがまた!

スパルタカスが古代ローマカラテの新たな構えとして「ケモちゃんの構え」を極めるために頑張るという、一見ゆるそうですごくトガっているネタが大好きです。しかも、それを推してくるのがフェイタルという…なんでしょうね、このカワイイ組み合わせ。

ニンジャスレイヤー二次創作本の感想とか(1)

私は今まではどちらかというと二次創作には興味がないほうで、どんなに好きな作品でも、それを原作とするファンアート自体は、原作とは無関係なものと思っていたんですね。ところが、忍殺に関しては公式がむしろ二次創作を積極的に推奨しているようなところがあって、それを受けて、私もこの作品に関しては原作小説、公式のコミカライズ・アニメ化のみならず、ヘッズの実況・考察ツイートや感想ブログ、そして二次創作マンガ・小説・音楽等を含めたムーブメント(もっと正確に言えばミーム=情報遺伝子の継承)こそが、ニンジャスレイヤー作品の総体なのではないかという考えに至りました。

まあ、そこまで深く考えるまでもなく、単純に自分と同じ重篤なファンの方々が、ニンジャスレイヤーという底知れないスケールの作品を読んで、そのエッセンスをどう表現するかというのに興味があります。なので、それら二次創作作品についての感想を書き残しておくというのもまた、きっと何かしらの意味はあるよねってことで。あとは加えて、ごく個人的な備忘録という意味合いもあります。

そんなわけで、これから何回かに渡って、私が過去に購入したニンジャスレイヤー二次創作本の簡単な内容紹介と、感想を書いてみようと思います。タイトルの凡例は、『誌名』(サークル)、主な著者 / 購入場所…というような感じ。それに、分かる範囲でサークルさんのサイトへのリンクと、写真で表紙の紹介をします。基本、誌名などは奥付を見て手動で入力していますので、表記ミス等あればご指摘ください。

またこれから紹介するすべての作品に言えることですが、創作活動って本当にエネルギーを要することで、普通は日々いろんなことを犠牲にしないと成り立たないと思うんですよね。なので、それらの結晶たる作品たちに対しては、ボンモーや翻訳チームに対するのと同じくらいの深いリスペクトを持っています、ということが拙い文章を通じて最低限伝わればいいなと。絵が上手いからとか好みだからとかそういうことじゃなくて、込められたカラテに対して平等にソンケイを。
※あと「○○=サン」は敢えてふつうに「さん」と表記します。

いま手元にトータルで20作品くらいあって、全部は大変かもしれないけど、出来る限りはピックアップしてみます。その際の順番はバラバラで、発表された時期や購入した時期が前後することがままあるかと思います。それらに特段の意図はありませんので、あしからず。

『ニンジャ文化祭記念アンソロジー』(イカジャーキープレス社
しまださん主宰合同本 / COMIC ZIN新宿店

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2013年4月に秋葉原で開催された『ニンジャ文化祭』合わせのアンソロジー。実はこのとき私は既にニンジャヘッズだったのですが、イベントには行けなくて、後日委託が始まってからZINに買いに行きました。確かこれが初めて買ったニンジャ二次創作同人誌です。ちなみに、ZIN新宿店さんはすごくて、さほど広い店舗面積でないにもかかわらず、ニンジャ同人誌を集めた一角が常設であるんですよ!

さて本作は、総勢30名以上の作家さんが参加された、小説・イラスト・マンガなんでもありの合同本で、初見でそのあまりの熱量に圧倒されたのを覚えています。しかも結構みんな書籍挿絵のイメージから自由な独自デザインだったり、当時まだ書籍化されていない2部、3部のキャラだったりというのを、がっちり特徴を掴んで表現していて。なんかこう、一見バラバラなんだけど不思議と根っこは繋がっているという、ニンジャの二次創作とはなるほどこういうことかと。ネタの方向性としては、キャラクターの魅力を生かしたシチュエーションものの作品が多いです。原作3部まで追いついたヘッズにはぜひ紹介したい1冊。

『ネオサイタマ駐屯組のなんか(冬)』(OEPPU
沖ノ島げろり庵さん / ニンジャ万博

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げろり庵さんの作風は好きで何作か買わせてもらいました。まずネオサイタマ駐屯組という括りが当時自分のなかになくて、新鮮だった記憶が。つまりは2部のザイバツに属するニンジャのうち、ワイルドハント以下ネオサイタマに駐留しているニンジャたちのお話です。改めて考えると、彼らそれぞれキャラが強烈に立っていてバランスがいいんですね。

原作小説では深く掘り下げられていないニンジャたち(ニンジャスレイヤーが殺してしまったので)のコミュニケーションが生き生きと描かれています。登場するニンジャはほぼオリジナルのデザインにもかかわらず、ひと目でそれとわかるのがすごい。ダークドメインの圧倒的な強さについて噂する駐屯組の面々がなんだかゆるくてカワイイです。それでいて、ダークドメイン登場シーンは一貫してシリアスでカッコイイ。あとイグナイトのやんちゃぶりに対して、不遇なプリンセプスのシーンは笑いました。ローマ帝国…。

『ニンジャごはん』(TWO-PAGE
ゆんぺすさん、ほか合同本 / 2014年冬コミ

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ニンジャとグルメを題材にした合同本。ありえないメンツが手狭な食卓で鍋を囲んでいる表紙絵とタイトルからしてキャッチーで、告知を見た時点でガッチリ掴まれてしまいました。ゆんぺすさんの絵柄はポップで洗練されていてかわいい!冒頭のブラックヘイズとフェイタルの日常生活の話が最高で、ほんとにこんな感じであってほしいなあという。イグナイトとインペイルメントのおつかいもカワイイ。

ほかにも、やかんさんのちょっと応援したくなるOL風ストーカーとか、今井にゅうさんの半泣きで山盛りいくら丼をかっこむエーリアスとか、見どころたくさんの本です。それとつい何度も読み返してしまうのが、うさぎ小天狗さんのユカノのズボラ飯風日記。本編では常に超然としてあまり本心を明かすことのないユカノ(だからいまひとつ人気がないのかな?)なだけに、ものすごくフランクな語り口調に好感が持てます。オチも好き!

『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』先行上映会

11日土曜日、池袋P’PARCO「ニコニコ本社」での『ニンジャスレイヤー』のアニメの特別先行上映会へ行ってきました。以下、この記事はその翌日の12日に直後の感想を書きとめたものになりますが、ネタバレを避ける意味で、16日の配信開始後に公開とします。

ところで、上映会に先立って、渋谷タワーレコード3Fで「1/1スケール稼働式ニンジャスレイヤー人間」による忍殺メンポ配布会へも行ってきました。コミケだとかアキバならともかく、まだアニメも始まっていない渋谷タワレコで、どんなふうにプロモーションするのか興味があったので。
時間になると、スタッフの方とともにニンジャスレイヤー人間さんが来て、非売品のメンポ(要はマスクですね)を配っていました。お客さんは案の定まだちらほらという感じで、写真を撮っているかたも何人か。私もせっかくの機会なので、一緒に写真を撮ってもらいました。目つきが鋭く、ポーズも決まっていて、研修の進み具合を感じた。ニンジャスレイヤーはこれから世界的なムーブメントになっていくので、これは実際なかなかない機会ですよ。

さて池袋へ移動後、時間になってP’PARCOの前へ行くと、すでに公園側に待機列がずらりと。幸運にも整理番号が前のほうだったので、列の中へ入れてもらいました。
そう、今回チケットに関してはひと苦労あって、一度は発売日の発売直後に速攻で売り切れてしまい、完全に諦めていたんですよね。その後、何故だかローソンチケットで復活しているという情報があり、そのタイミングで予約購入できたのです。発売日、転売の報告がいくつか上がっていたので、もしかするとそれらの違反キャンセル分が回ってきたのかも…って、知る由もありませんが。なんにせよラッキーでした。

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19時から、イベントスタート。最初の1時間はニコ生でも中継があったとおり、キャスト5人によるトークでした。テンポのいい進行と、スキャッター役の水島さんの芸人さんばりの立ち回りで、すごく盛り上がった。
またその中で、アニメのフォーマットについてもいろいろと新しい発表があり、各話15分で全26話2クールの作品であること、6月からBD/DVDが順次リリースされることなどが明らかになりました。

そして…いよいよ本編が公開されたのですが、ここからはどう書いてもネタバレになるので、未見で興味がおありの方は、先にニコニコの公式チャンネルかなにかで、まず1話を観ていただくのがいいかと思います。ていうか観てください。

視聴した感想

衝撃でした。あの力の入ったOPから数秒、全身から力が抜けていくのを感じた。エッ…これあの…マジで…って感じ。あのときの会場のお客さんの一体感すごくて、ざーっと波が引いていくというか、あんなに脱力感に包まれたことなかった。でそのあと、いやーこれはトリガーやってくれたと。

始めに言っておくと、私はトリガーの作った『インフェルノコップ』が大好きです。しかも、初めてこの作品を観たとき、これは系統としては完全にニンジャスレイヤーだと思ったんですね。なので去年の4月2日にアニメ化が発表されたときも、反射的にこんなことをツイートしていたのでした(このことは、ログを検索する今の今まですっかり忘れていたけれど)。

でもまさか、この要素を一切伏せた、あの感じの事前のプロモーションで、まんまインフェルノコップ(の表現手法)が来ると思わないじゃないですか。だって「あのキルラキル、LWAのトリガー」と銘打って、雨宮監督なんかはインタビューで「キルラキルを超えた」と豪語していて、でいてあのグリッグリ動くカラテアクション満載のPVでですよ。今にして思えば、これらがすべて全力の「フリ」だったんだなあというのが、もう。もう!

私がこの記事に関して、初見の方にはネタバレを避けてほしいと思ったのは、ひとえにこのショックを同様に味わってほしかったからなのです。というのも、このショックは私たちが原作小説のニンジャスレイヤーで「イヤーッ!」「グワーッ」「アイエエエ」に出会ったあのときと同種のものであり、ひいては、作中で一般市民がニンジャに出会ったときのNRS(ニンジャリアリティ・ショック)ともまた、メタ的な類似構造になっていると思うからです。まったく想定していない状況で、異質な価値観に出会った時の衝撃。

で、上映会での、そのあとの自分を含めたお客さんのリアクションですが…それが、爆笑だったのです。脱力からの爆笑。このアニメはこういう楽しみかたなんだ、というのが分かった後は、ただただ笑いました。休むヒマがほとんどないくらい笑った。

誤解のないように伝えるのが難しいんだけど、原作小説の『ニンジャスレイヤー』は、決してコメディー作品ではありません。もちろん、取っ掛かりとしておかしな日本語だとか、突飛なやり取りという要素はあるんだけど、過去の同作品のレビュー記事(『ニンジャスレイヤー』にハマる | 鏡像フーガ:創作同人漫画サークル)でも書いた通り、基本はめちゃくちゃシリアスなサイバーパンクSF小説で、本気で心に迫ったり泣けたりする要素もたくさんある、神話的スケールの連作なのです。そこは改めて強調しておきたい。徹頭徹尾シリアスで緻密に編まれたお話です。

そのうえで、「アニメイシヨン」では(少なくとも今回の先行上映会で公開された1話と2話については)、敢えて完全に”笑い”に振り切っていたのです。せっかくの待望のアニメ化の機会にしては、あまりにも潔く、逆に心配になるほどの、思い切った振り切りかたでした。

思えば、今までは一般に小説やマンガが原作のアニメ化というと、言いかたは悪いけれども、アニメ化が「上がり」みたいな消費のされかたが多い印象でした。意図的にしろそうでないにしろ、映像作品が決定版とでも言わんばかりの。だけど、本作に関しては、おそらくそれはまったく当たらなくて、原作小説は至上のものであり続けるし、それ以外のメディアの作品は多様性の在りようを示したものとして扱われる。なんというか、他の何を犠牲にしてでもそのように導きたいという、決断的な意図を感じました。これは折に触れて翻訳チーム自身が繰り返しアナウンスしてきたことなので、言行一致には違いありません。

これは確実に賛否両論。もしかすると、正統的なアニメ(というのも定義がよく分からないけれど)のファンや、それを期待していた原作ファンからは、辛辣な評価を受けたり愛想を尽かされるかもしれない。いや、正直なところ、私も最初の脱力のなかには「がっかり」も多分に含まれていたことは認めます。残念ながら落胆してしまう人たちの気持ちはすごく分かる。
例えばこれが、原作の重厚さを引き継いだ、全編が超絶作画で描かれたアニメ作品だったら、原作を読まない人にもニンジャスレイヤーの魅力を余すことなく伝えることができたかもしれないと。『キルラキル』や、その他名作と謳われるアニメ作品を正攻法で凌駕する作品だったらと。でもそうはならなかった。というか、原作者や翻訳チームが明確にそれを是としなかった。

しかし、それでもなお私が手放しでトリガーを絶賛したいのは、この作品を決して未完成なものでも、ニンジャスレイヤーではない別の何かでもなくて、「この表現形態(アートフォーム)において完成された」「余計なものを足しても引いてもいないニンジャスレイヤーそのもの」のアニメーション作品として実現してくれたことです。

実際、このお話の密度は相当なもので、1話にあたる「ボーン・イン・レッド・ブラック」は内容の同じオーディオドラマ版の38分、また2話の「マシン・オブ・ヴェンジェンス」はコミックス1巻丸ごと、これらを、OP/EDを除いて13分程度?のアニメに圧縮しているわけです。ほぼ、全部の要素を詰め込んで!特にヴェンジェンスの圧縮感は、原作なり田畑/余湖先生版のコミックスを読んでいると、尚更信じられないと思います。

そして、この表現形態についてひとつ思い至ったこととして、去年6月の有志によるニンジャスレイヤーオンリー即売会「ニンジャ万博」でのイベントスペースでの出しもの、野良修さんと無限軌道オニギリさんによる「ニンジャ紙芝居」、これがまさに今回の「アニメイシヨン」のエッセンスを、ずっと早く先取りしていたことに気が付きました。絵を行ったり来たりさせての「イヤーッ!」「グワーッ!」のミニマルな面白さ、それを受けての会場の異様な盛り上がりは、あの時のあれとまったく同じ!

「ニンジャ万博」に行ってきた | 鏡像フーガ:創作同人漫画サークル
http://spiegelfuge.dojin.com/?p=149

もしかすると、このハイブリッド紙芝居的な表現形態は、ニンジャスレイヤーコンテンツの面白さを端的に表現するには、最も適したアイデアなのかもしれない…と本気で思い始めています。「レイジ・アゲンスト・トーフ」はぜひアニメでもやってほしいですね。

さて、笑いに包まれた1話2話の連続上映を終えて、会場は大喝采でした。これはすごいものが来てしまったぞというのと、すごい瞬間に立ち会ってしまったという実感とともに。最後は、再び登場してくれたニンジャスレイヤー人間=サンの撮影会。

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そういうわけで、これ、世間的にはどのように受け取られるんでしょうね。すごく楽しみだし、評価が割れるだろうなということを除いては、まったく予測できません。
だけどいずれにしても、自分のようなファンにとって嬉しいのは、楽しみかたが更にひとつ増えたということと、にもかかわらず原作の翻訳は従来同様に続いていくし、今後もどこへ取り去られたりも貶められたりもしないということ。これに尽きます。

あと、公式コンテンツでここまで無茶苦茶にやってくれたということは、二次創作はもっと踏み込まなくてはいけない。今まさに二次創作に取り組んでいる私なんかは、むしろ強力に背中を押されたような気がしています。何かを新しく始めるときに、周りの様子を伺ったり日和っているようではダメなんだ。

今後「アニメイシヨン」に関して、楽しみでもあり、また怖くもあるのは、シリアス寄りのエピソードをどのように表現するかですね。ヤモト・コキにまつわるエピソード、特に「スワン・ソング~」をもし取り上げるのであれば、お笑い全振りで茶化すような感じにはしてほしくないし…とはいえ、それで別の魅力を引き出すようなものが出来るのであれば観てみたいし、みたいな。

私はこれ、意表こそ突かれましたが全面的に支持します。来週以降がすごく楽しみになってきました。

『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』公式サイト|NINJA SLAYER FROM ANIMATION
http://www.ninjaslayer-animation.com/

ニンジャスレイヤー第2部の感想

先日、小説版『ニンジャスレイヤー』の12巻めが出たことで、「キョート・ヘル・オン・アース」編、いわゆる第2部が無事に完結しました。Twitterでリアルタイム翻訳連載中のものが第3部なので、ようやく書籍版ももう少しで追いつけるところまできたわけですね(と言っても3部がまた長いわけなんだけど)。

それに合わせて、公式アカウントでは、恒例となっている人気エピソード投票が開催中です。これは第2部を対象として、専用ハッシュタグ#njvotekhoeに好きなエピソードと感想を書こうというもので、これまでも折に触れて行われてきた企画ですが、加筆修正完全版たる書籍が出揃ったことで、ジュブナイルめいた長大な連作である第2部を、読者の視点からあらためて俯瞰できるようになりました。やっぱ他の人の感想を読むのがおもしろい。

第2部とは

ニンジャスレイヤーという作品は、基本的には1話完結の読み切り作品になっていて、それぞれのエピソードでフォーカスされる主人公や登場人物、舞台、テーマも毎回違います。書籍に掲載されるお話の時系列もバラバラ。それが連なることによって、大きな奔流とも言えるストーリー、テーマが浮かび上がるという構成になっています。

第2部は、おおよそ40話あまりのエピソードからなり、書籍で言うと計8冊分。第1部の「ネオサイタマ炎上」が4冊なので、単純に倍のボリュームです。その主な舞台は「キョート」。作中のキョートは日本から独立した共和国で、その地下には、逆円錐型に連なる巨大都市、貧富が厳しく階層化されたディストピア「アンダーガイオン(≒祇園)」が形成されているという設定です。
忍殺というとよく話のネタにされる「ネオサイタマ」も出てきますが、あくまで話はここキョートを中心に展開するのが第2部の特徴。ちなみに、ニンジャスレイヤーはネオサイタマからキョートまで新幹線で移動します。

お話的には、シンプルに直線的なダークヒーロー復讐劇であった1部に対して、2部では謎解き、アドベンチャーのようにして、だんだんと敵の正体や目的が見えてくるという作り。その象徴的なサブキャラクターが、タカギ・ガンドーという壮年の私立探偵です。彼はニンジャではない一介の市民で、しかもZBR(ズバリ)という薬物に溺れすべてを失う直前にまで追いやられた、落ち目の探偵なのですが、ニンジャスレイヤーとの出会いによって、また彼自身の過酷な運命と直面することによって、劇的な再起を果たします。これがまず、一番の見どころ。

もちろん、第2部でもニンジャスレイヤーはニンジャを殺しまくります。ニンジャスレイヤーことフジキド・ケンジの妻子の仇は、実は第1部で滅ぼした組織「ソウカイヤ」のニンジャだけではなかった、というのがその理由。マルノウチ・スゴイタカイビルで起こったニンジャによる市民の大量虐殺は、ネオサイタマの「ソウカイヤ」、キョートの「ザイバツ・シャドーギルド」との間で起こった、ニンジャ同士の血で血を洗う抗争の結果だった。その事実をガンドーとともに逆に辿って行くうち、キョートで起こっている陰謀、そしてその首謀者「ロード・オブ・ザイバツ」に立ち向かうことになる。

一方で、こういったシリアスな筋書きのなかにも、ユーモラスで魅力的なキャラクターが多数登場するのが2部の特徴です。代表的なのがシルバーキーというキャラ。彼はキョートで鍼灸師を営む普通の気のいい兄ちゃんだったのですが、ある日ニンジャソウルに憑依されたことで、他者の心の中に潜航する特殊能力を身につける。これがいい感じのお調子者で、彼がこの2部を相当に引っ掻き回してくれます。

ついでに言うと、このシルバーキー関連のエピソードでもそうなんだけど、2部ではネットワーク上の仮想世界がより詳細に描かれていて、忍殺の世界におけるSF的な骨組みをより強固なものにしています。
作中では、ごく一部の優れたハッカーだけが知覚することのできる電子的超越世界「コトダマ空間」と、魂あるいは自我の在り処であるところの心象世界が、同一のものとして描かれる。つまり、ネットワークとは、IPアドレスとは、データとはという表現を掘り下げるたびに、魂とは、自我とは、死とはいう哲学的な問いに直結する構造になっているのです(これは3部でより明らかになります)。とあるエピソードにおいてハッカー、ナンシー・リーが言う「ネットワークとは何?いつからある?」というセリフが象徴的でした。

他にも、好きなキャラでいうと、ネオ・カブキチョで店を構えるオカマのニンジャ、中2病をこじらせて暗黒面に堕ちてしまう少年ニンジャ、立派な修行僧なのにニンジャソウルに憑依され苦悩するニンジャなんかもいます。

私の5票

いま、ニンジャスレイヤーにハマりすぎてTwitterサブアカウント(@epxstudio_nj)も持っているのですが、そちらで今回の第2部エピソード投票企画に投じた5票分のエピソードが、次に挙げるものです。レギュレーションで5票までということになっているので絞ってはみたものの、正直他にもいい話はいっぱいあって、苦渋の選択ではありました。

せっかくなのでここでは、投票時に書いた作品への感想コメントに若干の補足をしつつ、タイトルはTogetter版へリンクを張っておきます。ああそう、大事なこととして、ニンジャスレイヤーという作品は書籍化もされていますが、Twitter上で今もそしておそらく今後も、ほぼ全ての作品を無料で読むことができます。Togetterでもいいし、iOSやAndroidをお使いであれば有志の作ったリーダーアプリが便利です。

初めて読むのであれば、下記の中では「チューブド~」が特におすすめ。

ゲイシャ・カラテ・シンカンセン・アンド・ヘル

忍殺でこのタイトルで面白くないわけがない!ゾンビーニンジャ、ジェノサイドのハードボイルドな活躍を軸に、ニンジャスレイヤー、ザイバツ一味ら多元的に展開する物語構成、爆走する新幹線そのものの目まぐるしく変化する状況、そのなかで翻弄される一般市民の勇気と意地。

チューブド・マグロ・ライフサイクル

ぶっ飛んだ設定がガンガン出てくる一方で、アンダーガイオンの閉塞的でリアルな日常描写は、現代の日本社会の鏡写しのようで。書籍版の結末でのあまりにも繊細な加筆修正には舌を巻いた。ヨロシサン製薬の真実。鹿!テクノ!

リブート、レイヴン

第二部の助演男優賞タカギ・ガンドーのターニングポイントとなる物語。定番SF設定をなぞりつつも、切ないシチュエーションにぐっと来てしまう超名作でした。構成もすごく凝っている。2部の他のエピソードを十分に読んだ後に、ぜひ読んでほしい。

スリー・ダーティー・ニンジャボンド

共闘ヤッター!まさかのニンジャスレイヤー、ジェノサイド、フォレスト・サワタリという3大狂人の夢の共闘編。書籍版のわらいなく先生の見開き挿絵には大興奮しました。終わりかたがまたいいんだ。ぜひいつか映画化を実現してほしいエピソードのひとつ。

ウェイティング・フォー・マイ・ニンジャ

第2部は、張り巡らされた伏線が網目のように交錯して、その交点で展開するこういうファンサービス的なエピソードが醍醐味だと思うのです。すべてのキャラクターが生き生きしていて、ふふってなる。

そのほか、2部のエピソード一覧はWiki(エピソード一覧/第2部 – ニンジャスレイヤー Wiki*)を。

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