ニンジャのウスイホン勝手にレビュー第4回です。
『シマッテコーゼ!』(ちくわ大明神)
ヌーヌさん主宰合同本 / COMIC ZIN新宿店
これは2013年の夏コミ合わせの本だったのかな?私は遅ればせながら、わりと最近になってからZINの店頭で購入しました。総勢30名の作家さんが参加された、大ボリュームの小説・マンガアンソロジーです。箔押しの入った美しいオールスターキャストの表紙絵は、巻頭のマンガも描かれている今井にゅうさんによるもの。その他、ヘッズ界隈ではお馴染みのウキヨエ師さんが多数参加されています。
あぶらあげさんのザイバツ・グランドマスターを犬に例えた4コマが、すごくしっくりくる「擬犬化」で上手いなあと思います。また、うさぎのかぶりものさんによるブラックウィドーとフューネラルが出会う話は、オリジナル設定とはいえアマクダリニンジャのディセンションにも色々な背景があることを伺わせる印象的なシチュエーションでした。
あとワザ・スシで執拗にマグロをオーダーするユンコちゃんの話(しまださん)とか、後にシャーテックを生むICBS思想が、実はセンチとガントがノリで話していただけっていうの(uzamさん)とか、2部ラストで心の折れたパーガトリーをニーズヘグが拳を交わして拾い上げる熱い小説(あまねさん)とかもおもしろかったです。
特にすごいなと思ったのは、デスフライさんの小説『スマッシュ・ライク・レイン、ブロウ・アズ・ウィンド』。ディセンションしたばかりのウミノ・フマトニことソニックブームと、その師たるインターラプターの秘話を描いたエピソードで、ラスガ前夜へときれいに繋がるラストが素晴らしいです。ソニックブームが好きになったし、こういう二次創作は本当にそのキャラに思い入れがないと書けないだろうなあと思いました。
『IDOLSL@YER』
ヨシミツさん / 2014年冬コミ
以前、ニンジャネタで緻密なモテモテ王国パロなども描かれていた吉光さん(Pixiv)の冬コミ本。タイトルからアイマスのクロスオーバーネタかと思いきや、あくまでもシリアスでカラテシーンもカッコいいオリジナルエピソードでした。忍殺二次創作って、こういうふうに本編エピソードを模したオリジナルエピの読み切りマンガって意外と多くないですよね。
ストレートにアメコミ調の描写が、公式のコミカライズでもどこもやっていないので逆に新鮮でした。巻末のジェノサイド&エルドリッチとサバジョのイラストも、モノクロながらものすごく力強くてカッコいいです。
『い・け・な・い ニンジャガールズ』(TWO-PAGE&ヤラカシタ・エンタテイメント)
ゆんぺすさん、下品ラビットさん、沖ノ島げろり庵さん / ニンジャ万博
あくまで健全な少年誌的スケベギャグをテーマにしたという合同本(全年齢向け)。ただただ気楽に読めて楽しめます。大好きですね!ゆんぺすさんのマンガは、オリジナルニンジャのザップドがハレンチ・ジツでいろんなことをするっていうお話で、なぜか超ノリノリのガンドーとエーリアス、それに対してジト目の女性キャラ陣に笑いました。すごいカワイイ。
下品ラビットさんの妄想力全開の「イグちゃんなう!」は、その熱いイグちゃん推しに痺れます。情熱がすごい…!またげろり庵さんのモスキート×フブキ・ナハタというありそうでなかった組み合わせは、あのモスキートがタジタジという結果になんだか納得してしまいました。リー先生の服だけ溶かす溶解液、最高です。
『犬にも劣る』(OEPPU)
沖ノ島げろり庵さん、ほか合同本 / 2014年冬コミ
この本はすごくて、全編が「孤独なヤクザ処刑エージェント」本なんですね。これは、ダークドメインがニンジャとなる前の過去についてザ・ヴァーティゴがask.fmで答えたもので、つまりは本編にもまったく描写がないモータル時代のダークドメインについて、このたった一文から7名の参加ヘッズの方々が想像力を巡らせた本なのです。なんという多様性の素晴らしさ。
げろり庵さんの表題作は、普段の作風とは違うシリアス100%の小説とマンガによる短編で、ギリギリに追い込まれた局面でもクールに立ち回る、若き日のダークドメインが描かれています。ヤクザ組織の抗争のなかにニンジャが紛れ込む複雑さを丹念に描写する前半パート、ニンジャ同士のカラテをインパクトのある絵でダイナミックに表現した後半パート、また同様にマンガパートと文章パートの白と黒のようなコントラストに味わいがあります。